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『All He Ever Wanted』(Anita Shreve著、 Back Bay Books)

c0077412_10305470.jpgホテルの火事、という衝撃的な場面で始まるが、そのあとは語り手が、生涯を共にしようと決めた女性に近づき、働きかけ、紆余曲折の末やっと結婚にこぎ着ける、という特に変わり映えのしない淡々とした青春小説風に展開する。語り手はアメリカの小さな学園都市で大学教員をしている、それなりの教養のある男性。見た目もやることもあまりぱっとしないが、野心もあればそのための努力もするというごく普通の男である。
しかし、彼が伴侶とした女性は「普通の女性」ではなかった。彼女は、あなたを愛してはいない、と明言した上で結婚を承諾し、よき妻として、またふたりの子供のよき母として過ごしてきたが、語り手には何も知らせずに自分だけの秘密の隠れ家を作っていたのだった。物語はこの辺りから急展開を見せる。彼女はやはり夫に隠れて、ある男性と親しく付き合うようになっていたが、その男性は、語り手も狙っている次期学部長職の候補者として現れた、語り手にとっては恐るべき強力なライバルだった。隠れ家を見つけられた妻は、あなたを愛したことはない、と宣言して家を出る。語り手は、この妻を取り返し、ライバルをけ落とす一石二鳥の方法を考えだして実行する。
ごく平凡な男の抱いたごく当たり前の幸せ――しかしそれはどんどん彼の手から遠ざかっていったのだった。彼が悪かったのか。それとも……。(2008.6.30記)
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by nishinayuu | 2008-09-13 10:31 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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