『玻璃の天』(北村薫著、文藝春秋)

c0077412_11144225.jpg「幻の橋」「想夫恋」「玻璃の天」という3つの章からなる長編であるが、各章はもともとはそれぞれ独立した短編として発表されたものらしい。巻末の初出情報によると、「オール読み物」の2005年11月号に「幻の橋」、2006年7月号に「想夫恋」、2006年11月号に「玻璃の天」が発表されている。
時はロサンゼルスオリンピックの翌年で、帝室博物館やら帝国図書館がある時代ということなので、1932年である。語り手は皇族、華族のお嬢さんたちも大勢いる由緒ある女学校の生徒。だから友人との会話は「また、文使いなのよ。わたくし」「開けてよろしいの?」という具合。父が財界の有力人士であるこの家には、お手伝いさんがいるのはもちろん、おかかえのコックも運転手もいる。この運転手がベッキーさんこと別宮さんという、才色兼備で頼りになるすばらしい女性であるが、運転手になったいきさつや素性は謎に包まれている。ベッキーさんが、その頭の回転のよさと研鑽を積んだ学問を生かして、「幻の橋」では一人の男の怨念を見破って鎮め、「想夫恋」では身分違いの恋人たちに手をさしのべ、「玻璃の天」では周到に計画された復讐劇に一役買うことになり、と大活躍するシリーズ読み物である。(2008.6.25記)
☆「関西では、大きいのをスコップ、小さいのをシャベルというらしい。関東とは逆だ。これもまた、《所変われば》の一例だろう」という文がありました。もしかして関西人はわざと逆にしておもしろがっている?
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by nishinayuu | 2008-09-06 11:14 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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