『私たちの幸せな時間』 (コン・ヂヨン著)

c0077412_9123043.jpg『우리들의 행복한 시간』(공지영著、푸른숲)
タイトルの意味は「私たちの幸福な時間」。著者は「ポンスン姉さん」などの作品で知られる孔枝泳(コンヂヨン)。
ユンスという27歳の死刑囚が拘置所で書き綴った「ブルー・ノート」の部分と、ムン・ユヂョンという30代の女性が語る部分とが交互に出てくる、という形で構成されている。「ブルー・ノート」からはユンスの生い立ちと殺人を犯すに至った経緯、捨て鉢な気持ちから深い内省へと至る心の変化が、ユヂョンの語りからはやはり捨て鉢になっていた彼女が、ユンスとの出会いによって人間的に成長していく姿が浮かび上がる。
殺人者というのは特殊な人間か、全き善人は存在するか、赦すこと、赦されることの意味は、などなど、重いテーマを扱った作品であるが、著者がこの作品を書いていた時を振り返って「とても幸福な時間だった」と言っているように、読み終えた読者も「幸福な時間」を共有することができる。
1997年12月30日に5年ぶりに死刑が施行され、23人という膨大な数の死刑囚が刑場の露と消えたことに衝撃を受けた著者は、死刑囚、拘置所関係者、弁護士、判事、法学者などにインタビューし、関係資料や書籍を大量に読み込んでこの作品を仕上げたという。旬の作家が精魂を傾けた力作である。(2008.6.22記)
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by nishinayuu | 2008-09-04 09:12 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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