『ニッポン硬貨の謎』(北村薫著、東京創元社)

c0077412_10364892.jpg副題に「エラリー・クィーン最後の事件」とある。エラリー・クィーンを読んだことがないのにこれを読むのは無謀かもしれない、という懸念が読む前にふとよぎったのだが、果たしてその通りになってしまった。この本はエラリー・クィーンを知らないと面白みが10分の1ほどしかわからない。そもそもエラリー・クィーンを知らない者が読むのは著者に失礼である。というわけで、まず著者にゴメンナサイ、と言っておく。
それでもなお、楽しめる本ではある。エラリー・クィーンの未発表原稿が見つかり、それをかくかくしかじかの経緯で著者が翻訳することになった、というまことしやかな序に始まり、その「翻訳」の苦労を物語る注やら但し書きやらが本文にまけないほど、というのはオーバーだが、かなりの紙面を領している。翻訳書によく見られる、時にはありがたく、時には邪魔なこの部分をやたらに増大させているのも、苦労して翻訳しました、という体裁を取るための仕掛けの一つであろう。そもそも表紙に原著のタイトルめかした英文のタイトルまで入っているという念の入ったつくりの本である。さて、本文の事件そのものはわりあいあっさりしているのだが、事件と並行してエラリー・クィーン論が展開されており、そこが本当の読みどころにちがいない。(2008.6.17記)
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by nishinayuu | 2008-08-30 10:36 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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