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『僕とおばあさんとイリコとイラリオン』(ノダル・ドゥンバゼ著、児島康宏訳、未知谷)

c0077412_11292261.jpg訳者のあとがきによると、著者は1928年、グルジア(当時はソ連を構成する国の一つ)の生まれ。9歳のときに両親が反社会的活動の疑いで逮捕されたため、グルジア西南部にあるグリア地方に住む父方の祖母と暮らし始める。本書はそんな著者のほぼ自伝的な物語で、原文はグルジア語だという。
グリア地方の人々は「陽気」なことで知られる、ということだが、我々が考える「陽気」とは質もケタもまったく違う、むしろ暴力的で凄まじい悪ふざけが展開される。たとえば中年男のイリコとイラリオンは友だち同士なのだが、イラリオンはイリコにワインを分けてやろうとしないし、イリコはイリコでそれならワインを盗んでやる、と考える。その企てを知った僕は、あることでイリコを恨めしく思っていたので、イラリオンに協力してイリコを騙し、ワイン入りと見せかけた空っぽの甕の中にイリコを落とす。イラリオンはイリコを、生き埋めにするぞ、と脅してさんざん虐めた後で解放してやり、それから一緒にワインを飲んでおしまい、というぐあい。これはまだ序の口で、命にかかわるような、今身の回りでそんなことがあったら確実に事件となるようなことも、友だち同士の悪ふざけで通ってしまうのだ。そんな荒々しい人々に揉まれ、愛されながら、主人公の僕は成長していくのである。
読み始めはぎょっとさせられるが、最後にはほのぼのと温かいものを感じながら読み終えることができる、すばらしい物語である。(2008.6.15記)
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by nishinayuu | 2008-08-28 11:29 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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