「ほっ」と。キャンペーン

『フェルマーの鸚鵡はしゃべらない』(ドゥニ・ゲジ著、藤野邦夫訳、角川書店)

c0077412_1049401.jpg数学の歴史とミステリーを組み合わせた小説であるが、数学史の部分は詳しすぎ、ミステリーの部分は謎も謎解きの過程も魅力に乏しい、というのが偽らざる感想。『ペトロス伯父とゴールドバッハの予想』が断然面白かったし、『博士の愛した数式』もなかなかよかったので、数学に絡んだ小説は面白いに違いない、と意気込んで読み始めたのだが、数学者の名前の羅列がやたらに多くてまいった。まるで旧約聖書・創世記の第10章のよう。ガロアをはじめとする天才数学者の生涯を語った部分には、読みでのあるところもなくはなかったが。いちばんまいったのは、登場人物たちが謎解きのために集まって話し合う場面。芝居がかったやりとりをしながら、ときどき「どっと吹き出し」たりするのだが、どこが面白いのかさっぱりわからないのだ。双子の兄と妹以外は互いに血のつながりのない5人が一つ屋根の下で暮らしているという設定自体は魅力的なのに、そういうことになったいきさつの説明が足りない。とくに、双子の誕生のいきさつは、双子自身ももっと突き詰めて探るかと思ったのにあいまいなままで終わっているのが残念。
それでもまあ、事件の締めくくりは納得できるものだし、数学史も少しは勉強できるし、なによりも、最後まで読み通せばそれなりの達成感は味わえる。なにしろ数学にまつわる話だけで2段組、500ページ近い本なのだ。それでも訳者によると「著者には饒舌すぎるところがあり、あまりにページ数が多くなるので、版元と相談して一部を割愛した」そうで、本書ではこの部分がいちばん笑える。(2008.6.9記)
[PR]
by nishinayuu | 2008-08-23 10:49 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://nishina.exblog.jp/tb/9520628
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
<< 『時の“風”に吹かれて』(梶尾... 『花粉の部屋』(ゾエ・イェニー... >>