『モンシル姉さん』 (クオン・ヂョンセン著)

c0077412_9215637.jpg『몽실 언니』(권정생著、창비)
長い植民地支配からは解放されたものの、まだ国中が混乱していた韓国は、1950.6.25に始まった「韓国戦争(朝鮮戦争)」によってさらに大きな痛手を受けることになる。戦場にかり出されてそのまま帰らぬ男たち、体も心もずたずたに傷ついて戻ってくる男たち、夫のいない家で途方にくれる女たち。そんな苦しく困難な状況にあって、とりわけ悲惨だったのは幼い子どもたちだった。この物語はそんな子どもたちの一人であるモンシル姉さんと呼ばれた女の子が主人公である。
モンシルは7歳のとき、稼ぎのない父の許を逃げ出した母親に連れられて新しい父の許に行く。この新しい父に弾みで足を骨折させられ、モンシルは一生足を引きずって歩く運命を背負わされる。母と別れて父の許に戻ったモンシルは、新しい母と暮らし始める。この母は気だての良い優しい母だったが体が弱く、貧しい暮らしの中で無理をしたため、産んだ赤ん坊をモンシルに託してなくなる。モンシルは幼い姉ながら、まるで母親のように、懸命にこの赤ん坊の妹を育てるのである。戦場で傷ついて戻ってきた父の面倒を見、赤ん坊の妹を守り、義父の許にいる弟妹を心配しながら、ときには他人の家に住み込み、ときには物乞いをしながらも、モンシルは決して弱音を吐かない。モンシル姉さんは「我が民族の姉さんだ。あんなにも悲惨な日々に憎しみと怒りで立ち向かうかわりに、それを愛と涙で和らげて綿雲よりもっとふんわりした夢を咲かせた、奇跡のような姉さんなのだ」(児童文学者・イヒョンヂュ)。
この出版社の小説選には黄皙暎の『客人』『懐かしの庭』、ウンヒギョンの『幸せな人は時計を見ない』などが入っている。三番目の本はタイトルが気に入ったのでいつか原書で読もうと思う。あとの二冊はすでに翻訳で読んでいる。どちらも内容の深いよい作品だった。(2008.5.27記)
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by nishinayuu | 2008-08-16 09:22 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented at 2008-08-16 09:31
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