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『空中スキップ』(ジュディ・バドニッツ著、岸本佐知子訳、マガジンハウス)

c0077412_9435468.jpg23の物語を収めた短編集。作者は1973年生まれで、26歳のときに発表したこの作品で注目を浴び、大学で教鞭を執りながら作家活動を続けているという。
さて本の内容はというと、これがなんとも奇妙な物語ばかりで最初はびっくりするが、たちまち生き生きと描写される荒唐無稽な世界に引き込まれて抜け出せなくなる。犬のぬいぐるみを着て犬になりきっている男をママとわたしはペットとしてかわいがっていたが、食糧が尽きたときにパパが「犬なんだから食べてもいいだろう」と男に飛びかかる話(『犬の日』)。親孝行をしろ、と周りから責め立てられて心臓病の母親に自分の心臓を提供する羽目になった男の話(『借り』)。娘がボーイ・フレンドを連れてきたので、両親がいそいそと食卓に迎えたところが、その男が出身地である「絶叫町」について次から次へととんでもない話を披露する話(『イェルヴィル』)。昔は、赤ん坊というものは赤ん坊屋が粉を捏ねて竈で焼いて作ったものだという話(『ハーシェル』)などなど、細部はリアリティがあるのに全体は非現実的な話が並んでいる。
たとえば、目が覚めても鮮明に覚えているおかしな夢の数々を文字化したら、こんな感じの作品集になるかもしれない。この著者は昼間に自由自在に夢を見ることができる人なのではないだろうか。それに、こんな夢を見たら誰かに話さずにはいられないだろう、と思えば納得がいく。ときには哀れで、ときには滑稽な、おかしな物語を次々に読まされていると、出産後のお母さんが異様に太ってしまってベッドを離れられなくなり、お父さんはそんなお母さんに嫌気が差して出て行ってしまったが、お母さんがおばさんの手助けで100ポンドほどの減量に成功して元気になったとき、ぼくはお母さんが産んだ巨大な赤ん坊が家の中を動き回っている気配を感じる、という話(『100ポンドの赤ん坊』)などが、とてもまともな普通の小説のように思えてくる。(2008.5.20記)
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by nishinayuu | 2008-08-09 09:44 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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