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『OKAGE』(梶尾真治著、早川書房)

c0077412_974265.jpg『黄泉がえり』『つばき、時跳び』と同じく舞台は熊本。最初の登場人物は喫茶店を経営している奥崎和江。人を見るとその人に関する諸々のことがイメージとして見えてくる、という不思議な能力の持ち主である。その次の登場人物は悩み事を相談するために奥崎和江のもとを訪れた国広章子とその子どものきざし。奥崎和江は章子が名告る前にその名前がわかったし、章子がなにを悩んでいるのかもわかった。章子からさまざまな思考イメージが放射されていたからだ。しかし、きざしからはなんのイメージも放射されていないことに気づいて奥崎和江は愕然とする。3番目は村上也津志。十歳の時に不思議な生き物に出会って「毛むくじゃら」と名付けたが、その直後に、大洪水で熊本市のほぼ全域が泥土に埋まる、という異常な体験をしている。ここまでが物語の導入部で、この後きざしの失踪事件が起こる。やがて子どもの失踪はきざし一人ではなく、熊本市のあちこちで起こっていることがわかり、さらには日本全国で、そして世界中で同時に多発していることが判明する。地球規模の大変事なのだった。子どもたちはそれぞれの「不思議な生き物」を道連れに、付近で一番高い山を目指してひたすら歩き続ける。
新しい子どもたちが地球の危機を乗り越える、という点ではアーサー・クラークの『幼年期の終わり』と共通するが、この物語では大人たちが全滅せずに生き残り、新しい子どもたちとの絆もつながっていて、ほっとさせられる。しかし話はそこで終わり、ではない。いい歳の大人である奥崎和江にも「不思議な生き物」がついていた、というあっと驚くエピソードが最後に用意されている。(2008.5.17記)
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by nishinayuu | 2008-08-07 09:07 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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