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『天平冥所図会』 (山之口洋著、文藝春秋)

c0077412_94143.jpgトータル・パフォーマー』『われはフランソワ』『オルガニスト』に続いて4冊目の山之口洋。前の3冊はそれぞれまったく雰囲気の違う小説だったが、これもまたがらりと雰囲気が違って、舞台は天平時代の奈良の都。吉備真備、光明皇后、孝謙天皇、藤原仲麻呂、道鏡ら、記録に残る実在の人物と歴史上の出来事を基にしているが、それらの人物に肉付けし、彼らを自在に動かして、歴史上の出来事の「隠れたいきさつ」を解き明かす仕組みになっている。当時の役職名をはじめ時代にふさわしい用語を駆使し、人物や出来事の細かい点まできちんと押さえていて、いつもの事ながら著者の手並みの鮮やかさに圧倒される。史実だと勘違いしないよう心して読まねばならないが、天平の歴史の復習にもなる楽しい物語である。(2008.5.5記)

☆ちょっと気になったことがいくつか。一つは冒頭の「天平十八年、秋八月といっても暦の上だけで、まだ暑苦しい草いきれが立ちこめる……」というくだり。当時も「暦の上だけ」という言葉は通用したのでしょうか。旧暦は実際の季節にほぼ合っていたはずですが。それから「正倉院」の章の2にある「古来より」という表現。正しくは「古来」ですよね。最後にもう一つ。「勢多の大橋」の章の11に出てくる「五月の恋の吹き流しとばかり権勢になびいていた……」という表現。「五月の恋の吹き流し」の意味を取り違えているのでは? 山之口洋らしくないなあ、と思ったので次女に意見を聞いてみたら、「そんな細かいことに引っかかっていないで、物語を楽しみなさいよ」とあきれられました。
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by nishinayuu | 2008-07-24 09:09 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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