『オルガニスト』(山之口 洋著、新潮社)

c0077412_9565862.jpgブエノスアイレスに住む音楽雑誌の記者が、驚くべき才能を持つオルガニストを発見した、というところから物語は始まる。オルガニストの名はハンス・ライニヒ。専門家の意見を聞きたい、と記者が送ってきたディスクを聞いたテオは、その見事な演奏に驚く。ニュルンベルク大学でヴァイオリンを教えているテオは、そのディスクを天才的オルガニストで、大学の先輩教授でもあるラインベルガーに聞いてもらうことにする。そのためには、まずラインベルガーとの間にあるわだかまりを解かねばならない。テオが9年間も教授から遠ざかっていたのは、学生時代に起居を共にしていたオルガン科の学生、ヨーゼフ・エルンストのことがあったからだった。9年前、将来を見込んでいた愛弟子のヨーゼフを失うことになった教授は、そんなことになったのはテオの不注意のせいだと激しくテオをなじり、テオも自責の念に苛まれて生きてきたのだった。そんなテオの訪問を、教授は喜んで受け入れ、ふたりのわだかまりも解けたのだが、ハンス・ライニヒの演奏を聴いた教授はなぜか評価を保留する。
天才オルガニストの数奇な運命を描いたファンタジーでもあり、パイプオルガンやオルガン曲についてあれこれ語っている「蘊蓄小説」でもある。(2008.4.22記)
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by nishinayuu | 2008-07-08 09:57 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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