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『夏への扉』(R.A.ハインライン著、福島正美訳、早川書房)

c0077412_10124759.jpg家事ロボットなどの発明者であるダニエル・ブーン・ディヴィス、通称ダニィの愛猫ピートは、冬の間、家中のドアを次々開けるようダニィにせがむ。どこかのドアの向こうに夏の世界があるのでは、と思っているらしい。しかし今、一緒に事業を興した親友と婚約者に手酷く裏切られ、何もかも失ってしまったダニィ自身が、そんな夏への扉を求めている。やけっぱちになったダニィは、ふと目にとまった広告を見て、冷凍睡眠を契約してしまう。1970年から2000年まで眠り続けて現在の若さで目を覚まし、老いて醜くなった婚約者を見返してやろう、と考えたのだ。あわやという時に正気に戻ったダニィは冷凍睡眠をやめようとしたが、婚約者の策謀で無理やり長い眠りに就かされてしまう。さて、2000年の世界で目覚めたダニィは、技術者として一から勉強しなおす必要があったが、若さと好奇心ですぐに時代に馴染んでいく。しかし、不思議なことが一つあった。30年前に自分が頭の中で構想しただけで図面にはしなかったものとそっくり同じ新型ロボットが、2000年の世界で活躍していることだ。その発明者の名前を調べてみると、なんとD.B.デイヴィスとなっているではないか。
この作品は冷凍睡眠とタイムトラベルが組み合わされていて、このあとダニィは2000年の世界と1970年の世界をめまぐるしく行き来することになる。その過程で、はじめはなんの説明もなく呈示されて読者としてはとまどうしかない出来事や現象が、読み進むにしたがって意味を持って立ち現れてくる仕組みになっている。謎だったものが解き明かされていくその手並みの鮮やかさに、ワクワクしながら読み、読後もずっと高揚した気分が続いた。実に爽快なSFである。(2008.4.16記)
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by nishinayuu | 2008-07-05 10:12 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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