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『第二ヴァイオリン』(メアリー・ウェスリー著、三浦彊子訳、文藝春秋社)

カバーに著者の横顔の写真が載っている、というちょっと変わった本である。写真で見るとおり、著者はかなり年配の女性(1912年の生まれ)で、最初の小説が発表されたのが1983年、70歳のときだったという。
『第二ヴァイオリン』は1988年に発行された著者の6番目の作品で、訳者後書きには「典型的なイギリスの田舎町とロンドンを舞台に、グリーンの服の似合う女、ローラの姿がさわやかに浮かび上がる」とあるように、ローラという45歳の女性を主人公とした物語である。ただし、場面がめまぐるしく変わり、そのたびに主人公が変化する、というか視点がくるくる変わって誰が主人公かわからなくなってくる。また、ローラとかかわる男たちが、重要な役割を与えられて活躍するかと見えて、あっけなく消えていってしまうので、ちょっと肩すかしを食わされたような感じがする。冒頭にかっこよく登場するルーマニア人の指揮者・作曲家のクラッグも、ときどき意味ありげな登場のしかたをするマーティンも、かなり長く重要な位置を占めていたクロードさえも、ローラとのつながりは一時的なもので終わるのだ。しかし、それこそがローラの選んだ生き方だったのであり、やはりこの作品はローラを主人公としたローラの物語である、ということが最後の最後にはっきりする。(2008.2.23記)
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by nishinayuu | 2008-05-24 10:55 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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