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『夫婦幽霊 円朝芝居噺』(辻原登著、講談社)

c0077412_10142186.jpg周到に設計図を描き、細部をこつこつと組み立てて、絢爛たる幻の楼閣をうち建てた、とでもいおうか。凝りに凝った、企みに満ちた物語である。
まず、明治期に活躍した噺家・円朝が紹介され、彼の作品が速記の形で残されたことによって、多くの作家たちにも影響を与えたことなどが語られる。続いて、著者がその円朝の今まで知られていなかった作品の速記原稿を入手したいきさつ、現在はほとんど使う人のいない田鎖式速記を解読できる人を探しまわって、作品の翻訳にこぎ着けたいきさつ、などが明らかにされる。ここまでが導入部で、このあと著者が‘訳した’円朝の遺作である『夫婦幽霊』が5回にわけて語られ、各回の最後には「訳注」までついていて、いかにも翻訳本らしい体裁になっている。そして最後に「訳者後記」があり、ここで‘訳者’である著者は、『夫婦幽霊』という作品のほんとうの作者は別にいるのではないか、という大胆な推理を展開するのである。
『夫婦幽霊』という噺そのものも楽しめ、全体の謎解きも楽しめる、という趣向の作品であるが、謎解きに関わりのある「訳者後記」の部分が説明の羅列といった感じでもり上がりに欠け、感動するところまではいかないのが残念。(2008.2.10記)
☆もしかして「田鎖式速記」というのも著者の創作?と気になって調べてみたら、これはほんとうにありました。他にもいくつか確認したものがありますが、無知をさらすことになるので書かないでおきます。
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by nishinayuu | 2008-05-08 10:14 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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