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『秋の四重奏』(バーバラ・ピム著、小野寺健訳、みすず書房)

c0077412_10224993.jpg定年間近の男女4人が主人公の物語。ロンドンにあるビルの4階、会社の中枢から外れた資料室といった感じの部署で働いている彼らは、毎日顔を合わせているのに昼食を一緒にとることもなく、互いの家を訪問し合うこともない。仲が悪いからでもなく、偏屈だからでもない。それぞれ自分の生き方があって、干渉されるのも干渉するのも好まない、というだけのことなのだ。ただ、4人ともひとり暮らしで、ひとりを除いては結婚の経験もなく、女性のひとりは恋愛感情というものも経験がないという、一般的に言えば孤独な人たちではある。さて、女性ふたりは定年を迎えて職場を去ることになる。ふたりが去ったあと、その部署には新しく補充されてくる人はいない。つまり、ふたりの仕事は誰かが代わって引き受けなければならないほどのものではなかったのだ。やがて男たちが去れば、部署そのものがなくなると思われる。女性のひとりは、今までできなかったことを楽しもうと手探りを始める。もうひとりはもともと人とのコミュニケーションにやや問題があったのが、退職後はそれに拍車が掛かって、心身ともに徐々に壊れていく。
ここまではさえない男女の哀れな老後の物語、といった展開で、しかも問題の女性はついに孤独な死を遂げてしまうのだが、そのあとに思いがけない出来事が待っていて、なんとも愉快な展開になっていく。主人公たちと年齢の近い人たちにお薦めの一冊。(2008.2.9記)
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by nishinayuu | 2008-05-03 10:22 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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