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『語り女たち』(北村薫著、新潮社)

c0077412_9572266.jpg財産も暇もたっぷりあるひとりの男。出歩くのは好まないので本を読んで時間をつぶしてきた。三十を越した頃から視力が衰えてきたので、人の体験談を聞いて心のスクリーンに映るイメージを楽しもうと、新聞・雑誌に広告を出して語り女を募集する。そうして訪れてきた女たちの話を、海辺の街に部屋を借り、寝椅子に横たわって潮騒の音をBGMにして聞いていく……というなんとも羨ましい設定の短編集。全部で17編の短編が収められている。空想癖があるという設定のこの男が出した広告は、「おかしな話があったら聞く」というものだったことが『違う話』の中学生が発したことばでわかるが、語り女たちが語るのはいずれも、現実にはあり得ない話である。たとえば『違う話』の中学生は‘メロスは歓喜した’で始まる別ヴァージョンの『走れメロス』を読んだという話をする。
怪奇的なものやグロテスクなものはなく、どちらかというとさらりとした、爽やかな話が多い。中でも特にイメージが美しく、内容も感動的なのが『夏の日々』。中編小説を読んだような充実感が味わえる。(2008.2.7記)
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by nishinayuu | 2008-05-01 09:57 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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