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『獄中記』(オスカー・ワイルド著、福田恆存訳、新潮社)

オスカー・ワイルドが監獄の中で書き上げ、死後に出版された作品。収監の原因となったアルフレッド・ダグラスに宛てた書簡の形で書かれ、ダグラスがいかに不当に、芸術家としてのワイルドの時間を奪ったか、またいかに不当にワイルドから家庭を奪い、全財産を奪う結果を招いたか、を綿々と書き連ねている。才知あふれる芸術家として世間に認められ、自由奔放に人生を享受していた最中に、いきなり破廉恥な人間として糾弾され、獄にまで下らねばならなかったワイルドの悲痛な叫びが全編にあふれ、その苦しみが切々と伝わってくる。そして、ワイルドに寄生虫のようにたかって贅沢三昧に暮らしたあげく、ワイルドを破滅に陥れたダグラスという男には、真からあきれ、怒りを覚え、ワイルドに同情しながら読み進むことになる。ところがワイルドは、この書簡の形をとった作品の最後で、ダグラスとの「友情」が回復されることを願っているのである。さんざん恨み辛みを並べ、ダグラスが最低の人間であることをあばきたてたあとで、それはないだろうと思うのだが。どこまでが本心なのか、どこまでが芸術的虚構なのか、最後の最後で混乱させられてしまう、なんとも奇妙な作品である。(2007.12.22記)
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by nishinayuu | 2008-02-26 10:29 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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