『葎の母』(津島佑子著、筑摩現代文学大系97)

申京淑との往復書簡集で初めてこの著者の書いたものに接して好感を持ったので、手許にあった本を繙いてみた。『レクイエム』『空中ブランコ』『火屋』『葎の母』の4編が収録されているが、『空中ブランコ』は読まなかった。
『レクイエム』は母親が死んで叔父・叔母に引き取られた兄妹が、死んだ飼い犬のお墓を作ってやる話。母親の死を理解できない智恵遅れの兄と、そんな兄を見守る妹のすがたがあわれで、やりきれない気持ちにさせられる。『火屋』は家族の中で疎外感に悩まされる女性の話。長年連れ添った夫が実は犬だったと気づく、というところから話が始まる、ちょっとユーモラスで、ちょっと不気味で悲しい物語である。以上2編は22歳と26歳のときの作品のせいか、往復書簡集の津島佑子とは別人の作品という印象を受けた。『葎の母』も27歳という若い時の作品であるが、ここに登場する母は『レクイエム』や『火屋』の母親とはちがってぎすぎすしたところがなく、かなりの大物に描かれている。著者自身が成長したということだろう。(2007.12.9記)
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by nishinayuu | 2008-02-19 10:27 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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