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『引力』(李廣田著、岡崎俊夫訳、岩波新書)

「岩波新書」とあるが新書判ではなく、昭和27年3月6日発行の文庫本である。友人がネット販売で静岡の書店から手に入れたのを借りて読んだ。

この作品は日本の統治に対する中国民衆、特にインテリゲンチャの抵抗を描いた名作で、1946年に雑誌「文芸復興」に連載され、翌年単行本として出版された。作者Li Kuang-tienは抗戦開始後、泰山、河南、河北、四川へと学校と共に転々と移動し、最後は昆明に移って郊外の斗南村で1945年8月11日にこの小説を書き上げた。(以上、訳者のあとがきより)

語り手は、日本統治下の学校で国語教師をしている夢華(モンホア)。夫の孟堅(モンチェン)は身重の妻を残して町を脱出し、今は遠い自由区にいる。彼女は生徒たちのためには自分が必要だという使命感に燃えており、生徒たちも彼女を慕っている。が、彼女は統治下の学校に勤めていることを夫には言えないでいる。夫は手紙で彼女も自由区に来るようにと勧めるが、彼女は戻ってきてほしいと夫に訴える。老母のこと、老母になついている幼い息子のこと、生徒たちのことを考えると、彼女は決断が付かないのだ。しかし、日本人の監視の目、横暴な振る舞い、残忍な殺戮など、状況は日に日に悪化し、彼女はついに息子を連れて夫の元へと旅立つのである。
若い女性教師の苦悩、生徒たちの一途な思い、娘を気遣う老母の愛情などが切々と伝わってくると同時に、中国人の側から見た当時の状況の一端がわかり、小説としても歴史の教科書としても読める。(2007.10.12記)
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by nishinayuu | 2007-12-25 11:34 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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