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『われはフランソワ』(山之口洋著、新潮社)

c0077412_9304130.jpg百年戦争の混乱の中で放浪生活を送った伝説的な詩人、フランソワ・ヴィヨンの物語。確実な伝記的事実は何一つないといわれるヴィヨンの生涯を、残された数々の詩と様々な研究資料をもとにかっちりと組み立てて、ヴィヨン自身に語らせている。詩に歌われている事柄や人物が物語の中に巧みに取り込まれ、ヴィヨンの内面と足跡がいきいきと描写されており、ヴィヨンの「自伝」と錯覚しそうなほどに見事な物語になっている。
語り手の「おれ」はジャンヌ・ダルクが処刑された1431年にパリで生まれ、幼い日に修道士のギョームに預けられる。養父のギョームは「おれ」にフランソワという名を付け、おまえはフランス人だよ、と言い聞かせて大事に育てる。パリ大学で学んだが、「悪の世界」に惹かれて無頼の生活を送っているうちに、殺人事件に絡んでパリから追放される。このときから、官憲の目を恐れてさまよい、盗賊団と関わってまた追われ、という放浪人生が始まる。その間には、ふとしたきっかけからシャルル・ドルレアン公の居城・ブロア城に詩人として滞在し、抒情詩人であるシャルル・ドルレアンと詩を語る、という晴れやかな日々もあった。しかし幾度か牢獄につながれ、最後には死刑判決が下されて、前々から恐れていた、処刑台に醜い姿をさらす運命かと思われたが……。
もちろん最後は伝説通り「行方不明」になるのであるが、なぜフランソワ・ヴィヨンの足跡が消えてしまったのかを解明するオチもきちんと用意されている。また、読後にシャルル・ドルレアンの息子であるルイ12世の肖像画を見たくなる、というオマケもついている。(2007.9.11記)

☆ほんとうに読みでのある小説でした。ただし、作者が訳したと思われるヴィヨンの詩そのものは、どこがいいのかよくわかりませんでした。この本を読む前に、ヴィヨンの詩に親しんでおくべきでした。鈴木信太郎『ヴィヨン全詩集』(岩波書店)は品切れ重版未定だそうですが、ほかに天沢退二郎の『ヴィヨン詩集成』(白水社)、佐藤輝夫の『フランソワ・ヴィヨン全詩集』(河出書房新社)などがあります。
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by nishinayuu | 2007-11-17 09:30 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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