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『空中ブランコ』(奥田秀朗著、文藝春秋)

c0077412_958431.jpg読書会「かんあおい」2007年9月の課題図書。
5編からなる短編集。いずれも主人公が精神的に追い詰められて精神科の門を叩く、という設定。症状は現実に存在するものがとりあげられていて説得力があるが、精神科医の伊良部というキャラクターは、現実離れしていて説得力はない。その伊良部先生、患者が注射をされているのを見るのが大好きで、患者のやっていることにやたらに興味を持ち、自分の実力を顧みずになんにでも手を出す。けれどもそんな伊良部先生の子どもっぽい行動に辟易しながらつきあっているうちに、患者はいつの間にか悩みが消えているのに気がつくのである。読書会ではこの伊良部先生が大人気だった。看護婦さんも現実離れしたキャラクターで、伊良部とは絶妙の呼吸で患者を煙に巻く。
本のタイトルになっている冒頭の作品「空中ブランコ」が、伊良部のパフォーマンスの鮮烈さと、登場人物一人ひとりの描き方の綿密さで、集中いちばんのおもしろさだった。次は「ハリネズミ」その次は「義父のヅラ」……と読み進むにしたがっておもしろさが減ってくる(ような気がする)。伊良部のパフォーマンスに疲れてくるせいかもしれない。(2007.9.5記)
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by nishinayuu | 2007-11-13 09:58 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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