『サクランボの性は』(ジャネット・ウィンターソン著、岸本佐知子訳、白水Uブックス)

c0077412_10273111.jpg2冊目のジャネット・ウィンターソン、7冊目の岸本佐知子である。
物語の大部分はピューリタン革命のまっただ中の17世紀のイギリスが舞台である。主人公のひとりはその体重で象を空に吹き飛ばすほど巨大で怪力の女。もうひとりは彼女がテームズ川の泥の中から拾い上げた捨て子のジョーダン。この設定からもわかるように、寓話的で神話的な、あるいは奇想天外で荒唐無稽な物語である。
女の通称は「犬女」で、たくさんの犬を飼ってドッグレースで生計を立てている。恋や結婚には関心もなく、したがって縁もないが、偉大な母性愛の持ち主である。一方、チャールズ王を処刑したピューリタンたちを、人形の手足をもぐように殺してしまう殺人鬼でもある。こんな母に大切に育てられたジョーダンは、やがて母のもとを離れて幻の女フォーチュナータを探す旅に出て行く。この旅の物語にはラプンツェルなども登場して一見童話的だが、もともと不気味なラプンツェルの話がさらにグロテスクに変形されていて、あきれながらも感嘆してしまう。そして、この母と息子が時空を超えて1990年の世界にも生きる、という壮大で愉快な結末になっている。史実に忠実な部分と現実離れした物語が複雑に絡まり合った、なんとも迫力のある作品である。(2007.8.27記)
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by nishinayuu | 2007-10-27 10:27 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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