『巡礼者たち』(エリザベス・ギルバート著、岩本正恵訳、新潮クレストブックス)

c0077412_1145840.jpg広大なアメリカの片隅で生きる人々に焦点を当てた、12の物語からなる短編集。
大都市で繰り広げられる近代的な生活とは無縁の、片田舎で少し前の時代を生きているような人々が登場し、彼らの日常の出来事や彼らの交わす言葉が淡々と、乾いた文章で綴られている。が、そんな文章とつきあっているうちに、その中に潜む独特のユーモアと情感の虜になってしまう。
いちばん気に入ったのは8章目の作品――「デニー・ブラウン(十五歳)の知らなかったこと」。やけど治療が専門の看護士である母と、訪問看護士の父。いじめっ子だったけれど、いつの間にか遊び友だちになったラッセル。ラッセルの姉で、胸が大きいのを悩んでいるポーレット。そんな人たちに囲まれて暮らしているデニーが、少しずつ成長していく様子がほほえましい。また、段落の切れ目ごとに「……をデニーは知らなかった」という言葉が繰り返される、リズム感のある語り口が快い。(2007.8.19記)
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by nishinayuu | 2007-10-21 11:45 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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