『黄色い雨』(フリオ・リャマサーレス著、木村榮一訳、ソニー・マガジンズ)

c0077412_12502599.jpg舞台はスペインの山間の村。貧しさの中に取り残されていることに気がついた村人が一人、また一人と村を去って行って、彼らが捨てていった家も畑も荒れ果てている。語り手はふたりの子どもに先立たれ、一人だけ残った息子にも出て行かれた男。老いた妻と、雌犬を相手に暮らしていたが、雪に閉ざされた長い冬の間に、寂しさに耐えかねた妻は幾晩も村の中をさまよい歩いた末に縄で首をくくってしまう。たった一人になった男は、その目で見ているもの、記憶から取りだしたもの、心の目で見たもの、あるいは見たのか見なかったのか定かでないものを語り続ける。ただひとり、孤独の中で死んでいくまで、あるいは死んでからもずっと語り続けるのである。――男の孤独がひしひしと伝わってくる、やりきれないほど寂しい内容である。が、心の中の思いや目にしている情景を語る男のことばがあまりに美しく、途中で本を措くことができない。小説というより「散文詩」といったほうがよいような、一つ一つの文がきらきらと輝いている作品である。読後に巻末の「解説」を読んだら、なんと作者は詩人として出発したとある。やはりこれは「散文詩」なのだ、と確信した。(2007.7.29記)

☆タイトルと、装丁と、本の新しさに惹かれて、図書館から借りてきました。いちばん図書館を利用すべき学生時代、私は全くと言っていいほど図書館を利用しませんでした。やや潔癖症の気があったのです。だいぶ普通の人に近づいた最近は図書館の本も平気でさわれるようになりましたが、それでもできるだけ手垢のついていない本を探します。それで目にとまったのが『黄色い雨』。作者名になじみはありませんでしたが、もしかしたら発見があるかもしれない、という期待を抱いて借りてきました。すばらしい作品でした。残念なのは、校正ミス(助詞の間違い)が数カ所見られること。こんな雑な作り方をされては、せっかくの作品が台無しです。
[PR]
by nishinayuu | 2007-10-03 12:51 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://nishina.exblog.jp/tb/7104970
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
<< 『蛍の行方』(諸田玲子著、新潮社) 「在原業平、天の河原といふ心を... >>