『オレンジだけが果物じゃない』(ジャネット・ウィンターソン著、岸本佐知子訳、国書刊行会)

c0077412_11274320.jpg強烈な信仰を持ち、‘自分たち以外のすべてのものと戦っている’母親のもとで育った主人公の、葛藤と戦いと解放の物語。
幼いころの主人公にとって、母親は常に正しく、賢く、揺るぎない信念と意志を持つ人だった。しかし、やがて主人公は母親が絶対的な存在ではないことに気がついていく。耳の病気で耳が聞こえなくなった時も、学校でいくら努力しても認めてもらえなかった時も、母親はただ「ほら、オレンジをお食べ」と、オレンジをいっぱいくれるだけだった。
主人公は、自分が養女であることを知ったことより、訪ねてきた実の母を母親が邪険に追い返したことを知って傷つく。母親が自分に伝えてきた世の中と、実際の世の中が違うことも知るようになる。主人公は母親の敷いたレールからどんどん外れていき、やがて母親と決定的に対立して母親の元を去っていく。けれども、母親から独立し、精神的に成長した主人公はやがて……。(2007.7.21記)

☆半自伝的な小説だということですが、このような狂信的で高圧的な母親のもとで、よくも立派に大きくなったものだと、主人公(と作者)に拍手を送りたくなりました。からっとしたユーモアのある語り口のおかげで、重い内容のわりにじめじめしたところがありません。各章に「創世記」「出エジプト記」「ルツ記」などなど、聖書から取られた意味深なタイトルがついていたり、本筋の物語のあちこちにかなり長い寓話が挟まれていたり、構成が一風変わっていて魅力的です。
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by nishinayuu | 2007-09-23 11:27 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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