『気になる部分』(岸本佐知子著、白水社)

c0077412_13254727.jpgニコルソン・ベイカーなどの翻訳で活躍している岸本佐知子のエッセイ集。一般的に本の選び方としては、古典やいわゆる名作の中からとか、書評を読んでとか、装丁が気に入ってとか、作者が好きでとか、みんなが読んでいるからとか、いろいろあると思うが、翻訳ものの場合はもう一つ、翻訳者の名前で選ぶ、というのがあるのではないだろうか。私が最近知って、この人の訳なら読んでみようかな、と思うちょっと「気になる翻訳家」が岸本佐知子。この人の「気になる部分」って何だろう、という興味から読んでみた。
小見出しのタイトルが「翻訳家には向かない趣味」「夜になると鶏は」「恋人よ、これがわたしの」などなど、書名や聞き慣れた語句のもじりになっているものも多く、そのタイトルの下で、もとの語句からは予想もつかない内容が展開されていたりして、なかなかおもしろい。いちばんの傑作は「カノッサの屈辱」。歴史上の出来事とは全く関係はないけれど、内容はまさに「カノッサの屈辱」。「ほんとうは悲しい話」が、おもしろおかしく語られている。
「オオカミなんかこわくない」や「日記より」(おそらく夢の世界を描いたもの)などからも、著者がシュールな世界が好きな、一風変わった、そうとうひねくれた人であることがわかる。「バグが出る」と「都市の兵法-電車編-」には大いに共感を覚えたけれど、「名作知らず」にあげられている作品をかなり読んでいて、もちろん『小公子』と『小公女』の関係も知っている私は、自分ではひねくれているつもりだったけれども、ひねくれ方が足りなかった、と気づかされた。(2007.7.16記)
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by nishinayuu | 2007-09-21 13:29 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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