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『もしもし』(ニコルソン・ベイカー著、岸本佐知子訳、白水社)

c0077412_10312995.jpg現代はVOX。作中のふたりが出会うパーティー・ラインの電話番号が(2VOX)であり、またラテン語で「声」の意味でもある(訳者のあとがきによる)。
アメリカの西側に住むごく普通の勤め人である29歳のジムと、東側に住むやはりごく普通の勤め人である若い女性アビィが、アダルト・パーティー・ラインで出会い、それぞれの性的な体験や幻想を延々と語り合う。その長さは本の最初から終わりまで(ページ数は176ページ)、時間は午後6:10ころから10:00過ぎまで、ということがふたりの話の中身からわかる。1分で2ドル近い電話代もなんのその、ふたりは大いに意気投合し、盛り上がるのであるが、その饒舌なこと、想像力のたくましいこと。これだけの映像的な場面を頭の中に現出させる能力、それを言葉にする能力があるのなら、なにも相手を求めなくても、ひとりでやっていればいいじゃない、とつっこみたくなるほど、あらゆることを微に入り細にわたって描写するすばらしい観察力と語彙力、表現力の持ち主なのである。
しかしながら、『中二階』のあの徹底した観察の細かさを期待すると当てが外れる。それに、『中二階』はニコルソン・ベイカーにしか書けないが、『もしもし』は他の人にも書けるのではないだろうか、とも思う。ニコルソン・ベイカーには彼にしか書けない作品を書いてもらいたい。(2007.7.14記)
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by nishinayuu | 2007-09-17 10:31 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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