「今回は王と王妃のまわりの人々に焦点を当ててみました」と作者が言うように、この巻ではバルロやナシアスの人間的な面が語られる。ベルミンスター侯爵家当主ロザモンド、ナシアスの妹で下級貴族の妻アランナなどの女性たちが新しく登場するが、ロザモンドは男装の麗人であり、子持ちという設定のアランナさえ立ち居振る舞いがあどけない少女のよう、ということになっており、日常的な色合い、家庭を連想させるような事物は徹底的に排除されている。この巻で初めて、リイの属していた「世界」と、そこの「住人」がほんの一瞬姿を現す。今後この「世界」の物語がどんどん大きくなっていきそうな予感が……。(2007.1.22記)