『穴掘り公爵』(ミック・ジャクソン著、小山太一訳、新潮クレストブックス)

c0077412_11461954.jpg「公爵の日記」と、ところどころに挿入された「人々の証言」で構成され、嘘か誠か、本気か冗談か定かでないエピソード満載の、ちょっと疲れるけれど気になって途中ではやめられなくなる物語。
主人公は広大な屋敷におおぜいの召使いとともに暮らす年老いた公爵。大変な財産家である公爵は、あるとき思い立って、屋敷を中心にして放射状に8本のトンネルを造らせる。以来、外に出かけるときは、いつもトンネルを利用する。そんなこともあって、公爵は変人奇人、と見られている。実際、トンネル工事に携わった人たちや、馬車でトンネルを通行させられる御者、家の中で働く召使いたちは、公爵の奇行に出くわしたり、実害を受けたりもする。しかし、公爵は決して横暴だったり高圧的だったりすることはなく、むしろ物静かで心優しい人なのである。公爵は自分が人から変人奇人と思われていることを心得ている。だからといって公爵が変人奇人ではない、というわけではなく、ふつうでないことは確かなのだ。そんな公爵に、クレメントをはじめとする召使いたちが誠心誠意仕えていることが救いである。しかし、公爵の奇行はどんどんエスカレートしていき、ついにとんでもないことをしでかすに至る。(2007.5.27記)

☆公爵につきまとっていた幻影の正体が、最後に明らかになります。それは公爵にとっては衝撃的な、読者にとっては公爵への理解が深まる感動的な場面です。
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by nishinayuu | 2007-07-13 10:50 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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