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『死顔』(吉村昭著、新潮社)

c0077412_11552770.jpg読書会「かんあおい」2007年5月の課題図書。
2006年7月に亡くなった吉村昭の遺作集である。巻末に配偶者である作家・津村節子による「遺作について」という短文がついていて、著者の闘病の日々と意志的な死の瞬間、それを見守った家族の心情が記されていて、深く胸に響く本である。
「ひとすじの煙」は著者が若い時に遭遇した体験を綴ったもの。若い女性の自殺という悲惨な出来事に遭遇したことによって、かえって生きる力を取り戻す若者の姿がいきいきと描かれている。
「二人」と「死顔」は、次兄の死の前後を綴った作品で、重なりが多い。9男1女の兄弟の多くが病死して、次兄、すぐ上の兄、私だけが生き延びたが、その次兄も病死し、ついにすぐ上の兄と私だけが残される。その兄とのやりとりや、次兄の家族とのやりとり、妻とのやりとりを通して、死に対する著者の思いが語られている。家族以外の人には死に顔は見せたくないし、人の死に顔を見ることもしたくない、という話がどちらの作品でも繰り返される。人は潮が満ちる時に生まれ出で、潮が引く時に死んでいくもので、父親が死んだ時は、荒川の水が激流となって下流に向かっていた、というエピソードが印象的。
他に、保護観察士を主人公にした「山茶花」、不平等条約改正への道を開いた人々を扱った「クレイスロック号遭難」が収められている。(2007.5.24記)
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by nishinayuu | 2007-07-05 09:03 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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