『ザッカリー・ビーヴァーが町に来た日』(キンバリー・W・ホルト著、河野万里子訳、白水社)
2007年 06月 07日
緑は多いが何も起きない町に、ある日青いサンダーバードがトレーラーを引いて現れる。トレーラーの中にいる「世界一ふとった少年」ザッカリー・ビーヴァーを見るために、町の人々は見物料の2ドルを握りしめて行列を作る。13歳の少年トビーも、友達のキャルと一緒になんとなく列に並んでしまう。そして、ふたり用のテントほどもあるザッカリー・ビーヴァーを見物するのだが、「ふつうと違っているというだけで、その人をじろじろ見るのはおかしいじゃないか」と思うのである。トビーのかあさんは歌手になりたくて、コンテストに参加するために遠くに出かけてしまって、いつ帰ってくるのかわからないし、あこがれている女の子にはボーイフレンドがいる。だからトビーはザッカリー・ビーヴァーにかまけているひまはない。ところがある日、青いサンダーバードがどこかに消えてしまう。トレーラーと、その中のザッカリー・ビーヴァーを残したまま。(2007.4.30記)
☆もがきながら少しずつ成長していく少年たち、真摯で心暖かい町の人々の姿は実にすばらしく、感動的です。が、実在の少年だというザッカリー・ビーヴァーが、このあとどうなったかと思うと心が重くなります。全米図書賞(1999年度)をはじめ様々な賞を受けていますが、なんとなく後味のよくない本でした。