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『黄金の声の少女』(ジャン=ジャック・シュル著、横川晶子訳、新潮クレストブックス)

c0077412_15312034.jpg著者が、人生のパートナーである歌手・イングリット・カーフェンをモデルに創作した小説。フランス最高の文学賞であるゴンクール賞を受賞している。
物語は1943年のクリスマス、四歳半のイングリットが北海沿岸を走る二頭立ての馬車に乗ってどこかに向かっている場面で始まる。しかし場面はすぐに、ずっと後の時代のある日へと転じて、ステージに上がる前の彼女、ステージ上の彼女の姿と動きが描写される。その描写の合間に、そこに到るまでの彼女の半生を彩るエピソードが次々に差し挟まれる。一族の優雅な暮らしぶり、早くから見いだされた美しい声と音楽の才能、長い間悩まされた皮膚病、映画や舞台との出会い、などなど。シャルル(著者の分身)の語りとイングリットの言葉の引用によって展開されていくこの物語は、映画人、音楽家、画家、小説家、デザイナー、など多方面の芸術家の名前とエピソードのオンパレードで、まるで20世紀芸術を総復習するためのノートのよう。イングリットというひとりの女性の人生を語るためには、これだけ多くの人々、エピソードを登場させる必要があったというわけだ。著者のイングリットへの思いの深さが強烈に伝わってくる。(2007.4.28記)
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by nishinayuu | 2007-06-05 14:29 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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