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『その腕のなかで』(カミーユ・ロランス著、吉田花子訳、新潮クレストブックス)

c0077412_1524361.jpg主人公は40歳前後の作家で、夫との離婚を考えているときに、街でふと見かけた男性に惹かれて後をつける。彼が精神科医だとわかると、夫婦関係に悩む患者として彼の元に通い始める。主人公は精神科医に、自分の関わってきた男たちについて語るのであるが、それは精神科医を自分に引きつけるための手段なのである。まずはじめに語られるのは彼女に小説の執筆を依頼してきた編集者。次に父親。それからもちろん夫。続いて母の愛人であるアンドレ。さらに祖父、大叔父、フィアンセ、初恋の人、愛人、先生、生徒、歌手、役者、医者、読者、忘れていた男、通行人、見知らぬ男など、ありとあらゆる男たちが語られていく。この、男たちについての断章と、「彼とふたりきりで」と題した精神科医へ語りかける形の断章がほぼ交互に綴られ、男たちに関する部分は最後に「小説」として編集者に手渡されるのである。
本の表紙裏にあるLe Journal du Dimanche(日曜新聞)の評言に、「男たちについて書かれたこの小説は、読み進むにつれ、驚くべき手品によっていつの間にか、女たちについて書かれた男たちのための小説にすりかわっていく」とある。まさしくこれは「男たちのための小説」である。(2007.4.7記)
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by nishinayuu | 2007-05-10 11:56 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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