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『ソーネチカ』(リュドミラ・ウリツカヤ著、沼野恭子訳、新潮クレストブックス)

c0077412_1457245.jpg1992年に発表され、たちまちヨーロッパ各国で翻訳されて、著者の名を国際的に知らしめた作品。
ソーネチカはさえない容貌の、特に秀でたところもない女性。小さいときから本の虫で、長じて図書館の地下室で働いていた。そこに現れた反体制の芸術家・ヴィクトロヴィチに「見いだされて」結婚。夫の流刑地に同行してその地で娘を産む。厳しい毎日を送りながらも夫を信頼し、夫の才能に魅了されているソーネチカは、たびたびつぶやくのである。「こんなに幸せでいいのかしら」と。
時が流れて暮らしは豊かになり、夫の芸術活動も軌道に乗る。そしてある日、ソーネチカは17年続いた幸せな結婚生活が終わったことを知る。けれどもソ-ネチカは「あの人のそばに、若くて、きれいで、やさしくて、上品なあの子がいてくれたら、こんないいことはない。(中略)人生ってなんてうまくできているのだろう、老年にさしかかったあの人にこんな奇跡が訪れて」と考えるのだ。
ソーネチカ、夫のヴィクトロヴィチ、若くてきれいなヤーシャの三人の間には憎しみも争いもなく、互いへの思いやりと愛だけが存在する。爽やかな気持ちで本を閉じることができるすばらしい作品である。(2007.2.16記)
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by nishinayuu | 2007-03-09 15:03 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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