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『カイト・ランナー』(カレード・ホッセイニ著、佐藤耕二訳、アーティストハウス)

c0077412_1728347.jpg舞台はアフガニスタン。主人公のアミールは、裕福で慈悲深く、人々の尊敬を集めているババのひとり息子。ババの使用人アリのひとり息子であるハッサンとは同じ乳を飲んで育った。ハッサンにとってはアミールが唯一の「友だち」で、アミールにとってハッサンは「きみのためなら千回でも」といって、落ちた凧を取りに駆けていってくれる「忠実な遊び相手」である。そんなハッサンの友情を、アミールは1975年のある日、裏切ってしまい、その時点からアミールの心の苦しみと、ハッサンの苦難の日々が始まる。そしてふたりが少年期を過ごした「美しいアフガニスタン」は、ソ連軍の侵攻、その後の民族・宗派抗争によって跡形もなく消えてしまう。25年後、アミールに贖罪の機会がもたらされ、精神的・肉体的な闘いを経て、アミールの心は25年ぶりに解放されるのである。
この本は内容も文体もすばらしいが、装幀もじつに美しくて見事である。輝くような黄金色の空が画面いっぱいに広がり、オレンジやグリーンの雲が流れている。かつてアミールとハッサンの揚げた凧が、そして今、アミールとソーラブの揚げている凧が、目に見えるような気がする。(2007.1.9記)

☆絵本『世界一美しいぼくの村』でも昔の平和なアフガニスタンが紹介されており、描かれている村の情景は確かに夢のような美しさです。けれどもそこには、ババに従順でなければ生きられなかったアリや、アミールに従順であることになんの疑問も抱かなかったハッサンのような、被支配層の人々が存在していたのです。民族・宗派による差別の他に女性差別も深刻です。『カイト・ランナー』は贖罪と再生の感動的な物語ですが、真に「美しい村」とはなんだろうと考えさせられる作品でした。
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by nishinayuu | 2007-02-13 12:23 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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