「一条院失せ給ひて後、上東門院、和歌を読みし語」 その2

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☆『今昔物語』巻二十四第四十一の再話です。韓国語訳はこちら


今は昔、一条院が亡くなったあと、まだ幼かった後一条院が、目にとまった撫子の花を何気なく摘んだのを見て、母親の上東門院が次のように詠んだという。

見るままに露ぞこぼるるおくれにし心もしらむなでしこの花
(露をこぼす撫子を見ると涙が落ちる。父親を亡くしたこともまだわからない愛しい子よ)

その歌を聞いた人々は皆泣いたそうだ。

また、一条院がまだ天皇でいらっしゃったとき、皇后が亡くなったが、後に御帳の紐に結びつけられた文が見つかった。天皇にお見せしてほしいという感じだったで、おつきの者がお見せすると、文には歌が三首書き付けてあった。

よもすがら契りしことを忘れずは恋ひむ涙の色ぞゆかしき
(夜どおし契ったことを忘れずに私を思って流している涙が慕わしい)
知る人もなき別れ路に今はとて心細くもいそぎたつかな
(知る人もいないあの世への路に今はもう行かねばならなず 不安ながらも急いで旅立つことよ)

天皇はその歌を見て限りなく悲しまれた。話を聞いた世の人々も、泣かない人はいなかったと語り伝えられているとか。
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by nishinayuu | 2007-01-20 11:34 | 再話 | Trackback | Comments(0)
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