『ジーヴスとねこさらい』(ウッドハウス、訳=森村たまき、国書刊行会)


Aunts Aren’tGentlemen』(Wodehouse――1974年の英国版

TheCatnappers』(Wodehouse)――1975年のアメリカ版

c0077412_09041249.jpg本書はイギリスのユーモア作家・ウッドハウス(18811975)による最後の作品である。邦訳のタイトルは内容が一目でわかるアメリカ版のタイトルをもとに、ジーヴス・シリーズの1作であることも示していて、よくできたタイトルではある。一方のイギリス版のほうはちょっと意味不明な感じがし、そのせいでかえって興味がかきたてられそうな、捨てがたいタイトルとなっている。種明かしをしてしまうと、イギリス版のタイトルは本作の最後にバーティーがジーヴスに向かって言う次のような台詞から来ている。

「僕らの心は落ち着いている。なぜかというとここニューヨークはダリア・トラヴァース夫人から五千キロも離れているからだ。僕はあの懐かしき肉親を愛しているし、むしろ崇拝している。しかし彼女の道徳規範は弛緩しているんだ。何かしたいとなったら彼女はどどんと行って、それをやる。今回のねこの件でそうしたみたいに。叔母さんという種族の問題はなんだかわかるか?彼女たちは紳士じゃない。」

物語の主人公バーティーは、胸にぶつぶつができたため田舎に療養に行くことになる。行く先はサマセットの保養地ブリッドマス・オン・シーの近くにあるメイドン・エッグスフォード。その地に滞在中のダリア叔母さんがコテージを捜してくれた。同行するのはバーティーのお側付き紳士で生き字引のジーヴス。さてふたりが到着してみると、メイドン・エッグスフォードは「魔境」だった。アフリカ探検家でバーティーの仇敵であるプランク少佐を手始めとして、バーティーがかつてプロポーズして断られたヴァネッサ・クック、かつての学友で今やヴァネッサの恋人となっているオルロ・ポーターなどなど、バーティーの苦手な連中がわんさといるではないか。しかも土地の競馬大会を巡ってやっかいな事件が持ち上がる。ブリスコー大佐の持ち馬シムラ号に一財産を賭けたダリア叔母さんが、クック大佐の飼い猫をさらおうと企てたのだ。というのはシムラ号と互角の力を持つクック大佐の持ち馬ポテトチップ号はねこと仲良しで、ねこがそばにいないと力が発揮できないとわかったからだ。バーティーはこのねこさらい計画に巻き込まれてさんざんな目に遭うことになる。

この作品の魅力の一つは、気のいい青年紳士のバーティーと、控えめだが凜としたジーヴスのやりとりにある。ふたりは頻繁に古典や詩歌を引用する。時にはバーティーが言葉遣いが正しいかどうかをジーヴスに確かめる。そしてジーヴスはつねに的確に応える。ストーリーを楽しむと同時にイギリス紳士の教養あふれる会話を味わうための作品と言えよう。(2017.10.25読了)


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Commented by マリーゴールド at 2017-12-24 14:42 x
楽しそう!!
by nishinayuu | 2017-12-22 09:10 | Trackback | Comments(1)

読書と韓国語学習の備忘録です。


by nishinayuu