『A Woman of No Importance』(Oscar Wilde)
2017年 10月 27日
タイトルのno importanceは「取るに足りない」、「どうでもいい」とも訳せる。本作にはこのタイトルに合いそうな女が大勢登場するので、だれのことを指しているのか、だれがその台詞を言ったのか、はかなり読み進んでいくまでつかめない。それまではイギリスの有閑階級の男女の会話に付き合って、登場人物ひとりひとりの言動を楽しんでいればよい。そこへ新たにひとりの女性が登場すると、物語の雰囲気ががらりと変わる。そうしてそれまで場を盛り上げたり仕切ったりしていた人物の正体が次第に明らかにされていく。前半は緩やかに、後半は怒濤の如く進行していき、最後にはNo importanceと言ってのけた人物がその言葉をそっくりそのまま返されるという、機知にあふれた作品である。この作品はあらすじを読むと魅力が10分の1くらいになってしまうので、紹介は登場人物の名前と最小限の情報に留めておく。
*レディ・ハンスタントン――カントリーハウスの所有者。
*レディ・キャロライン――手のかかる夫にかまけていて、会話は上の空の女。
*レディ・スタッフィールド――美人ではあるが考えが浅はかな女。
*ミセズ・アロンビィ――気の利いた会話ができる才気にあふれた女。
*ヘスター・ワースリィ――イギリス上流社会の人々の中に舞い込んだアメリカ娘。雰囲気に気押されない自然体の言動で人々を圧倒する。
*ミセズ・アーバスノット――レディ・ハンスタントンの古い友人。
*ロード・イリングワース――才覚・容姿・財力に恵まれた怖いものなしの男。
*サー・ジョン・ポンティフラクト――妻キャロラインの言いなりになっているふがいない男。
*ジェラルド・アーバスノット――銀行勤めの青年。ロード・イリングワースから秘書になるよう求められ、明るい将来を夢見ている。
*ドーベニィ――副司教。
*ミスター・ケルヴィル――国会議員。
ずっと昔の学生時代に購入したワイルド全集にはこの作品が収録されていなかった(たとえ収録されていても今となっては文字が細かすぎて読めなかっただろうが)。そこで今回はProject Gutenbergからダウンロードし、読みやすい書体に換えて読んだ。便利な時代になりました。(2017.8.21読了)