『夏の嘘』(ベルンハルト・シュリンク、訳=松永美穂、新潮クレストブックス)


c0077412_10061260.jpgSommerlügen』 (BernhardSchlink2010

『朗読者』『帰郷者』『逃げてゆく愛』『週末』と読んできて、5冊目のシュリンク。本作は『逃げてゆく愛』に次ぐ短編集で、以下の7つの作品が収められている。




*シーズンオフ――ニューヨークの貧しい街区で暮らすフルート奏者のリチャードと、オーケストラが買えるほどの財力を持つスーザンが、シーズンオフの岬で出会って……

*バーデンバーデンの夜――シナリオライターの彼は、テレーズが行きたがったのでいっしょにバーデンバーデンに行った。恋人のアンに問い詰められた彼は適当に取り繕ったが、それはアンにとっては許しがたい「嘘」だった。

*森の中の家――彼とケイトが知り合って以来、ケイトの作家としてのキャリアはあがる一方で、彼の方は下がる一方だった。娘のリタが生まれてもケイトは作家として生きることを最優先にする。これに対して、家族の生活を守るために彼がとった行動は……。

*真夜中の他人――ニューヨークからフランクフルトに行く便で隣席に座った男。年のほどは50歳くらい。背が高くて細身で、知的な顔をし、黒髪にはかなり白髪が混じっている。身体になじんだ、柔らかく皺の寄ったスーツを身につけ、ヴェルナー・メンツェルと名のったこの男に、ぼくはこのあと翻弄されることになる。

*最後の夏――客員教授として毎年ニューヨークの大学に招かれた25年を懐かしみながら、今彼は妻と湖畔の家に滞在している。二人の息子と家族も呼び寄せたし、友人たちも立ち寄ることになっている。死ぬ前に人々と味わう幸福をうまく準備できた、と彼は思った。

*リューゲン島のヨハン・セバスティアン・バッハ――信頼関係が築けないまま父を見送ることになるのを避けたいと考えた息子。父と自分が二人とも好きな「海」と「バッハ」を楽しむために、9月にリューゲン島で行われるバッハ・フェスティバルに父を誘う。

*南への旅――子どもたちや孫たちに誕生日を祝ってもらいながらも孤独を感じてしまう彼女は、思い立って学生時代を過ごした町に旅をする。同行した孫娘のエミリアが勝手にアレンジしたアーダルベルトとの再会によって、彼女は気づかされる。彼女はアーダルベルトに捨てられたのではなく、自分が彼を捨てて別の人生を選んだのだということを。

始めのほうに登場する男性たちはそろいもそろって優柔不断で、女性たちは繊細さに欠ける。読み続ける気力が萎えそうになるが、「真夜中の他人」あたりから面白くなり、「最後の夏」は目が離せない展開となる。そして最後の2編はしみじみとした味わいのある作品となっており、さすがシュリンク、と納得して読み終えることができる。(2017.6.9読了)


[PR]
by nishinayuu | 2017-09-13 10:07 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://nishina.exblog.jp/tb/27454507
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
<< 『ロスチャイルドのバイオリン』... 映画鑑賞ノート27 (2017... >>