『死の翌朝』(ニコラス・ブレイク、訳=熊木信太郎、論創社)
2017年 08月 16日
『The Morning After Death』(Nicholas Blake、1966)
舞台はハーバード大学がモデルと思われるガボット大学。登場するのはガボット大学の教授をはじめとする大学関係者たち。
主要人物は以下の通り(登場順)。
*ナイジェル・ストレンジウェイズ……イギリス人の私立探偵。客員研究者としてガボット大学ホーソン・ハウスの寄宿舎に滞在中。
*チャールズ・ライリー……アイルランド人の詩人。客員詩人として滞在中。
*チェスター・アールバーグ……ガボット大ビジネススクール教師。
*スーキー・テート……エミリー・ディキンスンをテーマに博士論文を執筆中の大学院生。
*マーク・アールバーグ……ガボット大文学部教師。チェスターの弟。
*エゼキエル(ジーク)・エドワーズ……ホーソン・ハウスの寮長。オクスフォード大時代のナイジェルの同級生。
*メイ・エドワーズ……ジークの妻。
*ジョシア(ジョシュ)・アールバーグ……ガボット大文学部教授で専門は古典文学。チェスターとマークの異母兄。ホーソン・ハウスは3兄弟の父親が建てて大学に寄贈したもの。
*ジョン・テート……スーキーの弟。ガボット大学の学生。ジョシアとの間で論文をめぐる諍いがあり、停学中。
物語は上記の5番目までの人物がエミリー・ディキンスンの故郷アマーストにドライブする場面から始まり、車の中での会話からそれぞれの人物の立場や人間関係が大体わかるようになっている。それに続くのはディキンスンの家の前にみんなを並べてナイジェルが記念写真を撮る場面。ここでは各人の顔立ちや身なりなどが詳しく描かれていて、人柄が類推できる。このあとに「『歴史的な写真だな』とナイジェルは独りごちたが、何気ないその言葉がいかなる意味を持つことになるか、幸いにもまだ気づいていなかった」という意味深な文が続く。この日一緒にドライブした男女は、このあとホーソン・ハウスの殺人事件の当事者、もしくは重要参考人になっていくのだ。
作者のニコラス・ブレイクは、本名セシル・デイ=ルイス――かの有名な桂冠詩人その人であり、『丘の上の樫の木』などで知られる小説家でもある。(2017.5.13読了)