『停電の夜に』(ジュンパ・ラヒリ、訳=小川孝義、新潮クレストブックス)
2017年 05月 04日
『Interpreter of Maladies』(Jhumpa Lahiri, 1999)
著者は1967年ロンドン生まれのベガル系インド人。3歳で家族とともにアメリカに移住しており、実質的にはアメリカ人である(見た目は無敵のベンガル美人)。主要な作品として次のものがある。
『その名にちなんで』(The Namesake, 2003)、『低地』(The Lowland, 2013)、『べつの言葉で』(In Altre Parole, 2015)
9編の短編が収録された本作品集は著者のデビュー作であり、その年の数々の新人賞を独占しているだけでなく、2000年にはピュリッツァー賞も受賞している。
*停電の夜に――すれ違い始めていたショーバとシュクマール夫婦。彼らの住居のある一郭が工事のために停電したとき、ふたりはローソクを灯した夜のキッチンでそれぞれの秘密を打ち明けていく。
*ピルザダさんが食事に来たころ――パキスタンに内乱のあった1971年の秋、ダッカに家族を残してアメリカに来ていたビルザダさんがわたし(10歳)の家にやって来ては夕食をともにし、夜のニュースを見るようになった。国費留学生のビルザダさんの所にはテレビがなかったからだ。
*病気の通訳――金曜と土曜に観光客を車で案内しているカパーシーの本業は、病院にやってくるグジャラート語しか話せない患者のための通訳。語学力を生かしてもっと世界を広げたいと考えている彼に、アメリカ人観光客夫婦の奥さんのほうが特別の親しみを見せてくれて……。
他の6編のタイトルは以下の通り。
『本物の門番』『セクシー』『セン夫人の家』『神の恵みの家』『ビビ・ハルダーの治療』『三度目で最後の大陸』。
(2017.2.25再読)