『The Seven Cream Jugs』(H. H. Munro)

[The Complete Works of SAKI ]Part1 ‘The Toys of Peace’の1編。

c0077412_9432057.jpgピーター・ピジンコウト夫妻が親戚のウィルフリッド・ピジンコウトについて、先だって准男爵の地位と莫大な財産を得たけれど、この家に来ることはないだろう、とうわさしている。というのも夫妻はこのウィルフリッドは将来の見込みはないと思ってとうの昔に見放してしまったからだ。一族には、名誉ある事績をあげた先祖に因んだウィルフリッドという名の者が多く、それぞれの領地や職業の名称で区別されていたが、今話題にしているウィルフリッドはなんと「ひったくりのウィルフリッド」と呼ばれていた。なぜなら彼には盗癖があって、サイドボードより小さくて運びやすく、9ペンスより値のはる「他人の持ちもの」は盗まずにはいられない子どもだったからだ。地位と財産を得た今は盗癖も治ったかも知れない、と彼との交際を期待する夫人に対して、夫のほうは今でも盗癖はもとのままだろう、とつきはなす。
そんな話をした30分ほど後に電報が来る。ウィルフリッドからで、車で近くを通るので表敬訪問したい、できれば一晩泊まりたいのでよろしく、という内容である。さて、二人は大慌てに慌てる。折しも応接間には、二人の銀婚を祝ってあちこちから贈られた品物がたくさん飾ってあったからだ。
ウィルフリッドが到着。夫妻は礼儀として、飾ってある贈り物を見せる。そして「クリームのジャグが7つも重なっちゃって」とか言いながらも、ウィルフリッドが何かに手を触れるたびにすぐにもとの位置に戻させる。それでも彼がゲスト・ルームに引き上げたあとで調べてみると、何かがなくなっているような気がしてくる。それで夫妻は翌朝、前もって相談していたことを実行する。ウィルフリッドがバスルームに入った隙に夫がゲスト・ルームに侵入し、ウィルフリッドの旅行鞄の中を探ったのだ。すると案の定、旅行鞄には銀製のクリーム・ジャグが入っているではないか。夫は急いでそれを手にしてゲスト・ルームを出る。
ところが、朝食に遅れてやって来たウィルフリッドが、この家には盗人がいるのでは?実はカイロに滞在中の母と相談して二人に贈り物を持ってきたのだが、それが旅行鞄から消えてしまった、と言い出す。「ひったくりのウィルフリッド」は母なし子のはず、と慌てた夫妻が聞きただすと、目の前の相手は「大使館のウィルフリッド」だと判明する。彼が夫妻のために持ってきた贈り物は銀製のクリーム・ジャグだったが、応接間にクリーム・ジャグがすでに7つもあったので、夕べはとり出し損ねた、と言うではないか。夫妻は真っ青になる。しかし夫人は立ち直りが早かった。そして手際よく問題を処理してのけたのである。

夫人はとんでもなく機転が利く女性で、夫の方は妻の機転のおかげで救われたと思ってほっとしている人のよい男性、という図である。サキの作品にはこの手の女性がよく出てきて、話としては愉快だが、身近にはいて欲しくない女性ではある。(2017.1.9読了)
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by nishinayuu | 2017-03-17 09:46 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by マリーゴールド at 2017-03-20 19:11 x
銀製の食器、すてきですね。
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