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『メッセンジャー』(ロイス・ローリー、訳=島津やよい、新評社)


c0077412_1030418.jpg『Messenger』(Lois Lowry, 2004)
サブタイトルは『緑の森の使者』。『ギヴァー』から始まるシリーズの3冊目である。
本作の舞台は『ギヴァー』や『ギャザリング・ブルー』のコミュニティとは違って、弱者が互いに支え合って暮らす平和な村である。村では人と違う点や短所が欠陥と見なされることは決してなく、むしろ尊重されている。たとえば目の見えない男も、顔の片側半分が深紅のシミ(あざ)で覆われている男も、それぞれの持つ知識や才能に見合った呼び名を得て平穏に暮らしている。
しかしこの村にも「影」の部分があった。村人は「トレード」という方法で欲しい物を手に入れることができたが、「トレード」のためになにを差し出したのかはトレードの仲介者と本人にしかわからなかった。しかし間もなく「トレード」のもたらした変化が現れてくる。人々は弱者を受け入れる心、寛容の心を失って、よそから逃れてくる人々の受け入れを阻止して自分たちの利益を守るべきだと言い出す。そしてついに村は3週間後に入り口を閉鎖することを決議する。
このとき一人の少年がある決意を持って旅に出る。遠くのコミュニティに住む一人の娘を、この村に住む父親の許に連れてくるために。村を囲む「森」は通過しようとする者を閉じ込め、からめ殺すことがあったので、村人から怖れられていたが、この少年だけはいつも無事に「森」を行き来できたので、これまで少年は村と外とを繋ぐメッセンジャーの役を果たしてきた。しかし今「森」はこれまでとは異なる様相を呈してきていた。「森」はなにかどろっとしたものが付着して、病的になっていた。「森」が「濃く」なっていっているのだ。

主な登場人物――マティ(この巻の主人公。幼少期に住んでいたコミュニティを離れて2年。「森」をよく知る少年で、傷を癒やす力を持つ)、「見者」(マティと一緒に暮らす盲目の男)、「助言者」(子どもたちに慕われている学校教師。顔半分に深紅のシミがある)、ジーン(マティが思いを寄せている少女。「助言者」の娘)、「指導者」(雪をついて外部からやって来た青年。淡青色の目を持ち、彼方を見る力を持つ)

物語のほぼ最初からマティ(2音節)がマット(1音節)のその後であるとわかる。だから盲目の男が誰なのか、その娘が誰なのかもわかる。さらに、雪の中をやって来た青い目の青年も登場して、シリーズものの楽しさが味わえる。さて、『メッセンジャー』の世界は将来が見えないまま終わっているので、完結編の『Son』も読まなければ。(2016.8.13読了)
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by nishinayuu | 2016-10-16 10:30 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by マリーゴールド at 2016-10-19 00:00 x
壮大な物語のようですね。
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