『あなたの本当の人生は』(大島真寿美、文藝春秋)


c0077412_9593287.jpg本書は2014年に刊行されたもので、初出は別冊文藝春秋303号~311号。
まず登場するのは新人作家の国崎真美。新人賞をもらったあとはぱっとせず、またまた300枚分の原稿を没にされたところだ。
国崎真美の原稿を没にしたのは担当編集者の鏡味(かがみ)。「おまえ森和木(もりわき)ホリーの弟子にならねえか」と言うなり、国崎真美を連れて森和木ホリーの屋敷へ。
鏡味の鳴らしたチャイムに応えて玄関に出てきたのは宇城(うしろ)圭子。20年ほど前、市民会館の事務員をしていたときに、講演に来た森和木ホリーにお茶を出したり挨拶に来た人をさばいたりしたのが縁で、森脇ホリーの秘書になった。森脇ホリーに「あなたの本当の人生はここにはない」と言われたのが決め手だった。森脇ホリーは何年かに一度、この台詞を口走るのだが、国崎真美もこの台詞を言われるかも知れない。もし言われたら、彼女がどうなるか追跡調査をしてみよう――そんなことを考えながら宇城はさりげない顔で国崎真美を森脇ホリーの待つ部屋に案内する。
二階の大きな部屋で国崎真美を待っていたのは「錦船シリーズ」という超ヒット作を持つ森脇ホリー。二度目の脳梗塞を起こしてから足の動きがおかしくなり、そのせいもあってか最近は創作意欲も起きない。仕事関係のことはもちろん、家の中の雑事も宇城にまかせていて、20年あまり前に宇城に声を掛けたのは実に正しいスカウトだった、と思っている。

森脇ホリーは国崎真美を見るなり「あなた、チャーチル(錦船シリーズに登場する黒猫)に似てるわね」と言う。鏡味がぐふっと吹きだし、宇城もうっすらと笑う。こうしてチャーチルこと国崎真美は森脇ホリーの広大な屋敷で暮らし始めるのだが、さて、国崎真美の本当の人生は?

時たま無性に大島真寿美が読みたくなるときがある。それはちょっと疲れているときやストレスがたまっているときだ。今回もそんな状態のなかでこの本を手に取った。期待通り、ふんわりと温かく、とても気持ちが安らぐ読み物だった。ここで、大島真寿美の作品を既読と未読に分けてメモしておく。
これまでに読んだ作品――『香港の甘い豆腐』『ほどけるとける』『かなしみの場所』『水の繭』『チョコリエッタ』『虹色天気雨』『宙の家』『羽の音』
これから読む予定の作品――『ビターシュガー』『戦友の恋』『それでも彼女は歩き続ける』『ゼラニウムの庭』『三月』『ワンナイト』『ピエタ』
(2016.6.13読了)
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by nishinayuu | 2016-08-17 10:01 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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