「ほっ」と。キャンペーン

『文学会議』(セサル・アイラ、訳=柳原孝敦、新潮クレストブックス)

c0077412_1055321.jpg
『El congreso de literatura』(César Aira)
本書には『文学会議』と『試練』という二つの作品が収められている。


『文学会議』――語り手(貧しい作家)はベネズエラの海辺で〈マクートの糸〉の謎の解明に成功し、400年前に海賊が残した莫大な財宝を手に入れる。にわかに大金持ちになった語り手(実はマッド・サイエンティスト)は招待されていた「文学会議」にある目的を持って出向く。すでにクローンの製造に成功していた彼は、世界征服のために天才のクローンを作ろうと考えたのだ。「文学会議」に出席していた天才作家カルロス・フェンテスの細胞を、クローンスズメバチを使って採取。それをクローン培養器に入れて街から離れた山の上にこっそり埋める。天才のクローンがたくさん生まれるのを待ちながら彼がプールで楽しんでいるとき、異変が起こる。
『試練』――16歳の少女マルシアはぽっちゃり型。運動のためにフローレス広場の近くを歩いていたとき、マオとレーニンという二人の少女が声を掛けてくる。生真面目なマルシアとは何の共通点もないパンク少女だった。しつこくつきまとう二人をなんとか振り払おうとして、短いことばを交わすうちに、マルシアは少しずつ二人にうちとけてくる。そして三人はまるで友達のようにスーパーに入っていき、やがて少女たちのスーパー襲撃が始まる。

『文学会議』は冒頭から人を食ったようなエピソードで始まり、それがさらにエスカレートしていって、まるでB級SFパニック映画のような状況になっていく。『試練』のほうはごく自然で日常的な世界を描いているように始まり、ある時点でとつぜん非日常的な世界に突入していって怒濤の結末へとなだれ込んでいく。どちらも目のくらむような動きと色彩に溢れていて、とても疲れる。表紙の絵(Artwork by Isamu Gakiya)が中身にぴったりで、読後何日たってもこの絵を見ただけでどっと疲れる。(2016.6.11読了)
[PR]
by nishinayuu | 2016-08-13 10:06 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
トラックバックURL : http://nishina.exblog.jp/tb/25895134
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
Commented by マリーゴールド at 2016-08-14 09:58 x
豊かな発想に満ちた小説のようですね。読みたいな。
<< 『あなたの本当の人生は』(大島... 『逆さまゲーム』(アントニオ・... >>