『The Sins of the Father』(Jeffrey Archer, St.Martin’s Paperbacks)


c0077412_1032981.jpg『父の罪』(ジェフリー・アーチャー、2012)
“My name is Harry Clifton.” “Sure, and I’m Babe Ruth”という、よくあるふざけたやりとりで話が始まる。前はハリー・クリフトン、後は彼の取り調べにあたった刑事のことばである。ハリーはブリストルから乗った船が沈没したとき、とっさの判断で、その事故で死んだトム・ブラッドショーになりすました。そして母宛の手紙を、同じく船に乗っていて助かった医師に託した。死亡の知らせが行くだろうが無事だから安心して欲しい、ただし愛するエマとその一族に迷惑をかけないために別の名前で生きていくことにした、という内容の手紙だった。ところがアメリカに着くと同時にハリーは逮捕されてしまう。ハリーが船で知り合ったブラッドショーは、実は脱走兵だったのだ。ハリーはあわてて自分の正体を明かすのだが、全く信じてもらえない。そして冒頭のやりとりとなる。
ハリーがトム・ブラッドショーになりすましたことは、名門ブラッドショー家にとっても好都合だったため、ブラッドショー家は有能な弁護士を雇ってハリーの身元証明を阻止する。こうしてハリーはトム・ブラッドショートして服役することになる。

物語は章ごとに視点を、ハリー、エマ、ジャイルズ、ヒューゴ、などに替えながら進められていく。ジャイルズとエマは貧しいクリフトン家とは身分違いのバーリントン家の兄妹で、ジャイルズはハリーの親友、エマは恋人であること、エマとハリーは異母兄妹の可能性を疑われて結婚できなくなったこと、二人が異母兄妹であればハリーとジャイルズも異母兄弟で先に生まれたハリーがバーリントン家の跡継ぎになること、などは読み進むうちにわかってくるが、どれもこれも詳しい説明がなく既定事実のように語られている。なんで?と思いながら最後まで読み、結末がつかない終わり方にまた、なんで?と思ってよく見てみたら、本書は『クリフトン年代記』の第2部だった!いきなり第2部から入ったので、登場人物の関係やここまでのいきさつをつかむのに苦労してしまった。表紙にきちんと第2部と表示してあればいいのに。それはともかく、刑務所や軍隊の場面でも残虐さやどぎつさがなく、善人と悪人(たとえばエマとジャイルズの父親で、もしかしたらハリーの父親かも知れないヒューゴ)がくっきりしていてわかりやすいし、ストーリー展開も見事。第1部まで遡って読むのはしんどいけれど、ハリーとエマの運命が気になるので、第3部から先は読んでもいいかな、と思っている。
第1部『Only Time Will Tell』は『時のみぞ知る』、第2部の本書は『死もまた我らなり』、第3部『Best Kept Secret』は『裁きの鐘は』というタイトルで新潮社から邦訳が出ている(第2部のタイトルは懲りすぎでは?)。シリーズとしては第7部まで出る予定だという。(2016.5.7読了)
[PR]
by nishinayuu | 2016-07-12 10:32 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
トラックバックURL : http://nishina.exblog.jp/tb/25783986
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
Commented by マリーゴールド at 2016-07-12 23:51 x
ジェフリー・アーチャーは手に汗を握る舞台を作り出すのが上手ですね。読んでみよう、邦訳で。
<< 「多摩動物園」その4 『ロンドンの二人の女』(エマ・... >>