『The Lake of Dreams』(Kim Edwards, Viking Penguin)


c0077412_1096100.jpg『レイク・オブ・ドリームズ』(キム・エドワーズ、2011)
物語の舞台は日本→アメリカ北部→カンボジアへと移動するが、主要舞台はアメリカ北部の湖沼地域である。主人公のルーシーは父の不可解な死のあと家を離れ、ジャカルタで出会った日本人男性のヨシと意気投合して、現在は二人で日本に住んでいる。二人の住居の家主はヨシの学友だったフジモロ氏の夫人である(フジモロはたぶん藤本ですよね)。弟のブレイクがスカイプで、母が交通事故に遭って脚を痛めた、と知らせてきたのをきっかけに、ルーシーは2年ぶりに故郷の家に帰る。
JFK空港からさらに1時間のフライトのあと、やっと湖が見えてくる。湖の名はイロコイ語でランブータン。湖周辺の軍用地だった広大な土地が最近軍から返還された。父亡き後、祖父が興した事業を手中に収めた父の弟は、湖を含むその土地を開発して事業を広げようとしている。そして父が愛していた家も、開発に支障を来すので買い取りたい、と母に持ちかけている。ひとり住まいには広すぎる家をもてあましている母は、その申し出を受け入れようかどうか迷っている。父とずっと不仲だった叔父は、父の急死で関係修復が不可能になったのを悔いているのか、ブレイクを事業に誘った。10月に恋人のエイブリーが出産する予定なので、ブレイクは当面の仕事として叔父の提案を受け入れようとしている。
彼らの家は、1910年にハレー彗星が現れたときに16歳だった曾祖父のJoseph Arthur Jarrettが1925年頃に買ったものだった。母は父の死後、父のlove, love, loveという声が至るところから聞こえるといって二階を閉めきっていたが、その晩、二階にある自分の部屋に泊まる事にしたルーシーは二階のあちこちを見て回った。施錠された戸棚を開けてみると、古い紙の束が見つかる。その中に曾祖父Josephに当てた925年9月21日付の封筒があり、曾祖父にIris(14歳)の処遇について相談する内容で、差出人はRとなっていた。すると母も、前に見つけて隠しておいた箱の中身――同じ筆跡のもう一通の手紙と、何枚もの書類――をルーシーに見せる。母によるとその箱は、曾祖父が納屋のロフトに隠したトランクの内張の中から見つかったものだという。Rとは誰なのか、Irisとは誰なのか、そして曾祖父はなぜ箱を誰にも見られないようにトランクの内張の中に隠しておいたのか……。ここからルーシーの遠大な探索が始まり、家族の歴史から消し去られた人々を光の中に蘇らせるというロマン溢れる物語へと展開していく。

本書は『Memory Keeper’s Daughter』でデビューした作家による長編小説。著者の故郷・ニューヨーク州のFinger Lake regionにおける体験を下敷きにして書き上げたものだという。物語に登場するthe Women’s Rights National Historical Parkは実在の場所。
☆要所、要所に差し挟まれている「彗星の出現」が印象的です。ただ、ヨシとのあれこれ、昔の恋人とのあれこれなどは、本作とは切り離して別の物語にしてもよかったのでは? いろいろ盛り込みすぎたせいで中心テーマの感動が弱まった気がします。(2016.4.12読了)
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by nishinayuu | 2016-07-04 10:12 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by マリーゴールド at 2016-07-09 00:03 x
おもしろそう!!原書は時間がかかりそうだから翻訳をよみたい。平凡な推測だと、その謎の人物は父と叔父なのではないでしょうか。
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