『風の吹く日は』(モニカ・ディケンズ、訳=村井洋子、未知谷)

c0077412_9104977.jpg『The Winds of Heaven』(Monica Dickens、1955)
本書の主人公はルイスという初老の女性。不幸な結婚生活の果てに未亡人となり、資産もなく特に才能もないので、三人の娘に順繰りに世話になるしかないという、なんとも情けない境遇に陥ってしまう。愛情をこめて育てた娘たちだが、現在の彼女たちの考え方や暮らし方にはなじめない。そんな自分が娘たちのお荷物になっていることを日々思い知らされているルイスは、自分の力で自分らしく生きたいという思いを強くする。そんな初老の女性のよたよたした闘いの日々がユーモアたっぷりに綴られている。
ときどき「やたらに詳しい目次」のある本にお目にかかるが、本書もその一つ。内容紹介を兼ねてその目次を以下に記しておく。
第1章――風の吹き荒れるロンドンの街でルイスは一人ティーハウスに逃げ込んだ。不器用な彼女はカップの紅茶を太った男の本にかけてしまう。
第2章――夫ダドレイの死と破産。ルイスは幼友達シビルのホテルと三人の娘の家を渡り歩くことに。さて、ロンドン郊外の長女ミリアムの家。
第3章――一流女優を目指す次女エヴァは男優デイビッドとの不倫に夢中。ロンドンの彼女の元には二ヵ月。お金をかけずに時間をつぶす技も…。
第4章――末娘アンは上流にあこがれる農場主フランクに嫁ぎ怠惰な性格を奔放に発揮している。ルイスは農作業や家畜の世話を手伝おうとするが…。
第5章――ルイスの孫娘エレンは大のお祖母ちゃん子、ミリアムの夫アーサーは出世街道を邁進する弁護士だが、なぜか長女エレンにはつらく当たる。
第6章――ワイト島の友人シビルのホテルはいつもながらキチガイじみていた。大みそかのパーティーでシビルが発作を起こし、ルイスは部屋を失った。
第7章――土と家畜に親しむフランクの好意で、ルイスは農園の大樹の元に仮寓を得る。彼女は生まれて初めて自らの生活を営むのかもしれない。
第8章――しかし風が、とても強い風が吹いてきた……。

作者モニカ・ディケンズ(1915~1992)は文豪チャールズ・ディケンズの曽孫。一家には「おじいさまのなさったこと」をしない、つまり物書きになってはならない、という暗黙の掟があったという。作者がそのタブーを破ったからこそ、本書のような楽しい作品が生まれたわけである。(2016.3.11読了)
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by nishinayuu | 2016-05-25 09:11 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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