『悪魔のヴァイオリン』(ジュール・グラッセ、訳=野口雄司、早川書房)

c0077412_10514083.png
『Les Violons du Diable』(Jules Grasset, 2004)
早川ポケット・ミステリー・ブック1780



主人公はメルシェという名のパリ警視庁警視。舞台はパリのサン・ルイ島。観光名所のノートルダム寺院や警視庁のあるシテ島と小さな橋でつながっている島である。この島にあるサン・ルイ・アン・リール教会に流れるヴァイオリンのすすり泣きに聞き入りながら、信者たちがミサを待っている場面から話は始まる。曲は「悪魔のトリル」として知られるタルティーニのソナタ。弾いているのは教会の管理人であるマルゴワール夫人の庇護のもとにある若い娘のジュリー。11時5分前にオルガン奏者のジャンもやってきて、あとはポワトゥヴァン司祭の到着を待つばかりとなっていた。しかし、朝の聖務日課を終えて朝食をとるために家に戻った司祭、人気者の説教師で、時間にうるさく、儀式やしきたりを重んじる司祭が、時間になっても現れない。様子を見に行った聖歌隊の少年が興奮して戻ってくると、息をきらせながらやっとのことで報告した。「司祭様は死んでいました」
かくして敏腕のメルシェ警視の登場となるのだが、ポワトゥヴァン司祭殺害事件は簡単には片付かない。というのも本部長がメルシェに別の問題も押し付けてきたからだ。それはメルシェによって大打撃を受けた組織犯罪グループの大物でサンテ刑務所に服役中のデデと、デデ逮捕につながる情報を警察に与えたジゼールのからんだ問題だった。ひもの男(デデの共犯者だった)を殺した売春婦のジゼールは情報提供の見返りに刑を軽減されて、近々釈放されることになっていた。そしてデデはジゼールを殺すために脱獄を企てていたのだ。さて、メルシェは司祭殺害事件をどのように解決し、デデによるジゼール殺害をどのように阻止するのだろうか。

殺しはあるが血みどろの描写はない。裏社会の人間は出てくるが、裏社会のこまごました描写はなく、ひたすらメルシェの推理だけに的が絞られている。また、音楽に関してはタルティーニやストラディヴァリ、文学に関しては「スガンさんの山羊」などが出てくるが、これといった蘊蓄はないし、時には邪魔になる「注」もないため、とにかくさらっと読める作品である。ただし、一つだけ、「ある本に出てくる犬のランタンプラン」というのは何のことかわからない。ここは「注」が欲しかった(と勝手なことを考えたのでした)。(2016.1.11読了)
[PR]
by nishinayuu | 2016-04-03 10:52 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://nishina.exblog.jp/tb/25478390
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
<< 「よこやまの道」その6 『夏の家、その後』(ユーディッ... >>