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『希望の記憶』(ウィリアム・K・クルーガー、訳=野口百合子、講談社)


c0077412_10363962.png『Copper River』(William Kent Krueger、2006)
「コーク・オコナー」シリーズの一冊である本書は、前作『闇の記憶』の後編で、前作で逃亡者となったコークが「闇」から「希望」へと抜け出すまでに遭遇したまた別の闇の世界が描かれている。つまりこの作品ではコークは副主人公であって、真の主人公はレンとチャーリーという二人のティーンエイジャーである。忌まわしい人間たち、忌まわしい事件が描かれているが、その忌まわしい部分の描写が執拗ではなく、むしろ信頼で結ばれた温かい人間関係が印象に残る作品となっている。
主要登場人物は以下の通り。
*コーク・オコナー:ミネソタ州タマラック郡の保安官。脚を撃たれたため歩行が困難な状態。
*ジュエル・デュボイス:コークの従妹で獣医。オジブアの血を引くがそれを否定しながら生きてきた。長年交流のなかったコークを匿い、治療する。
*レン:ジュエルの一人息子。ミシガン州のボディン地区中学校8年生で14歳。
*チャーリー:レンのガール・フレンドであり、唯一の友達。男に負けないことを誇示するために丸刈りにしている。酒浸りの父と二人暮らしで、父親が手に負えないときは「保護施設」で過ごすこともある。
*デルマー・ベル:「保護施設」の営繕係。
*カルヴィン・ストークリー:セレブのための施設の警備員。
*ネッド・ホダー:ボディンの治安官。ジュエルの古い友人。
*ゲリー・ジョンソン:新聞記者。地元の新聞マーケット・カウンティ・クーリエの編集者。
*ルイス・ジャコビ:『闇の記憶』の登場人物のひとり。「二人の息子の殺害者コーク」を懸賞金付きで追っている。
*ダイナ・ウィルナー:セキュリティ・コンサルタント。ルイス・ジャコビのために仕事をしていたが、今はコークの強い味方。

以上の人々のほかに大きな存在感を示しているのがミネソタでは絶滅したと言われているクーガー。少年レンと傷ついた一頭のクーガーの関係は「スマイラー少年」シリーズのスマイラーとチーターを思い起こさせるが、本書には挿絵もないし説明も特にないので、クーガーについてちょっと調べてみた。クーガー(cougar)はピューマ、パンサー、ともいい、さらにmountain lionともいうそうだ。つまりチーターが豹に似ていて全身が斑点で覆われているのに対して、ライオン系のクーガーには斑点がない。ただし、子どものクーガーにはチーターのような斑点があるので紛らわしい。それはともかく、クーガーやチーターが人間のすぐそばに現れるような土地もあるアメリカという国の広大さと荒々しさを改めて感じさせる読み物である。(2015.12.6読了)
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by nishinayuu | 2016-03-06 10:37 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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